地域ではたらく、いきるを考える物語

どこで働くか。 それは、かつて「条件」で選ぶものだった。 通勤時間、給与、会社の規模―― 数字のバランスで生き方を決める時代。 けれど、時代が少しずつ変わっている。 オンライン会議も、リモートワークも当たり前になり、 “働く場所”は、地図の中心から少しずつ外へ広がった。 それでも、人は場所に縛られる。 それは、効率や利便性のせいではなく、 “人と人の距離”を測るためだ。 本当に大切なのは、 「どこで働くか」ではなく、 「誰と、どんな風に働くか」。 この物語は、 ひとりの設計士が“近さ”の中で見つけた “支え合う仕事のかたち”を描いたものだ。 仕事と暮らし。 効率と余白。 都心と地元。 その境界が静かに溶けていく―― そんな時代の、ささやかな再設計の記録。

都会での働き方が「正解」と信じていた。 通勤の長さも、仕事のストレスも、 みんながそうしているから仕方ないと思っていた。 でも、母が倒れた日、 その当たり前が一瞬で崩れた。 仕事を辞め、静かな町に戻ったとき、 最初に感じたのは「不安」ではなく「空白」だった。 社会とのつながりを失う怖さと、 母と向き合う時間の重さ。 そんな中で見つけた、家から徒歩5分の職場。 最初はただの“妥協”だった。 けれど、働くうちに気づいた。 誰かを気にかけ、誰かに気にかけてもらえる距離の中にこそ、 本当の安心があるということに。 仕事が人を支え、 人が町を支える。 そんな未来が、もうこの足元に生まれ始めている。

朝のパン屋、子どもたちの学童、公園のベンチ。 どこにでもある町の風景の中に、“働く”と“暮らす”がやさしく交わる瞬間があります。 このシリーズ「WORKとLIFEをもっと身近に。」は、 そんな小さな交差点をフィクションとして描きながら、 「働くこと」と「生きること」が本来ひとつであるという原点を思い出すための物語です。 舞台は、川沿いの遊歩道と商店街がつながる小さな町。 パン屋や印刷所、学童クラブ、カフェ、花屋…… それぞれの“しごと”が、少しずつ町を明るくしていきます。 はたらくことは、生きることのつづき。 そして、生きることは、まちを育てること。 このシリーズでは、そんな日常の中にある“もうひとつの物語”を追いかけていきます。